10月9日(金)、JUHYOプログラム「AI伴走-クマを調べる-」の最終回として、学生による成果発表会を開催しました。
本プログラムでは、身近な社会課題であるクマの出没問題をテーマに、学生がデータサイエンスや生成AIを活用しながら、主体的な探究活動に取り組んできました。
成果発表会では、3名の学生がそれぞれの視点からクマの出没データを分析・可視化した成果を発表し、講師との質疑応答や意見交換を行いました。
学生による成果発表
① クマの目撃地点を地図上に可視化
鈴木さんは、クマの目撃地点を地図上に表示し、出没状況を視覚的に把握することに取り組みました。
Google ColabやGoogle Drive、生成AIのGeminiを活用し、CSVデータの読み込みや地図上へのプロットに必要なプログラムを作成しました。
初めて使用するツールに戸惑いながらも、生成AIを活用してコードを作成・修正し、データの可視化を進めました。一方、背景地図が正常に表示されないエラーが発生するなど、技術的な課題にも直面しました。
質疑応答では、講師から地図ライブラリの仕様やGoogleマップを活用する別の方法について助言があり、学生からは「Googleマップにデータを移行できることを知らなかったので、試してみたい」と、今後の取組への意欲が示されました。
② クマの出没と市街地の環境との関係を探る
日下部さんは、2025年にクマの出没に関するニュースを多く目にしたことをきっかけに、山形市における出没状況の変化に着目しました。
年度ごとの出没地点を地図上で比較したところ、2025年は市街地の広い範囲で目撃されている様子が確認できました。
さらに、クマが食べ物を求めて市街地に現れる可能性を考え、民家の柿の木や家庭菜園、集合住宅のごみ集積所などに着目。Google Earthやストリートビューを用いて491地点を一つひとつ調査し、地図上に可視化しました。
その結果、地域によって住宅環境や樹木の分布に違いがあることや、特定の道路沿いに柿の木が多い傾向などが見えてきました。
また、気象庁の風向・風速データとクマの出没地点を重ね合わせ、食べ物のにおいが風によって運ばれ、クマの行動に影響している可能性についても考察しました。
分析にはChatGPTやGeminiなどの生成AIを活用しました。
講師からは、クマの出没回数と周辺環境との関係を回帰分析などの統計的手法で検証する方法や、人口密度、河川、山林などの地理的条件を組み合わせた分析について助言があり、今後の発展につながる意見交換が行われました。
③ クマの出没と河川・森林との関係を分析
佐伯さんは、過去と現在のクマの出没状況を比較し、住宅地への出没と地理的条件との関係を探りました。
先行研究を参考に、河川や森林とクマの目撃地点との位置関係に着目。Pythonの地図可視化ライブラリ「Folium」などを活用し、平成30年から令和7年までの出没データを地図上に重ね合わせて分析しました。
分析では、河川に近い場所で目撃が集中する傾向や、森林から離れた住宅地でもクマが目撃されている状況を確認しました。こうした結果から、河川がクマの移動経路となっている可能性について考察しました。
また、生成AIのGeminiをプログラミングや分析方針の検討、発表資料の作成を支援する「共同研究者」として活用しました。
取組の過程では、文字化けへの対応や地理情報データの構造の理解、オープンデータと実際の地理的状況との違いなど、さまざまな課題に直面しました。
質疑応答では、クマの目撃件数は人がクマを発見した回数であり、人口密度や人の活動範囲によっても左右されることが指摘され、データの解釈における新たな視点が共有されました。
データ分析の先にある社会課題を考える
3名の発表後には、講師と学生による活発な意見交換が行われました。
脇教授からは、データを収集・可視化すること自体を目的とするのではなく、「何のために分析するのか」「その成果を社会でどのように役立てるのか」を考えることの重要性が伝えられました。今回のクマの出没問題についても、出没状況を明らかにするだけでなく、クマと人間の共生や被害防止にどうつなげていくのかという、社会的な視点を持つことの大切さが示されました。
また、浅井講師からは、急速に進化する生成AIを積極的に活用することの重要性とともに、人と人が直接対話し、考えや経験を共有する場の価値についてもお話がありました。
参加学生からは、「研究の進め方を学ぶきっかけになった」「仲間と協力しながら課題を探究できたことが良い経験になった」といった感想が寄せられました。
本プログラムでは、完成度の高い研究成果を求めるのではなく、学生が自らの興味や疑問を出発点に、自由な発想で試行錯誤することを大切にしています。
当センターでは、今後も学生が卒業研究などの本格的な研究活動に取り組む前段階として、気軽に探究や実践に挑戦できる機会を提供し、主体的な学びを支援していきたいと考えています。


