NEWS##森林管理
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2023/10/04
- お知らせ
- インタビュー
山形の大切な場所で、今、何が起こっているのか?~森林のデジタル化で見えるもの~
山形県と宮城県の県境にある蔵王連峰のアオモリトドマツ(オオシラビソ)林では、ハマキガやキクイムシによる集団枯損が発生しています。これらの昆虫の大発生の原因は未解明です。2023年4月に行われたデータサイエンスカフェでは、「蔵王山のアオモリトドマツのデジタル化」という演題で、農学部のロペス・ラリー教授にご講演いただき、森林の衰退や樹種構成の変化には、虫だけでなく、気候変動も影響しているとのお話がありました。ご講演後、これからの森林研究におけるデータサイエンスの可能性や、研究を通して学生に伝えたいことについて、ロペス先生にお話しを伺いました。 聞き手・奥野貴士(データサイエンス教育研究推進センター長) 山形大学 Lopez Larry教授 (農学部主担当/森林生態学) なぜ、蔵王をフィールドに選んだのか? 以前、モンゴルで研究していたときのテーマは森林火災でした。しかし、研究を進める中で、火災よりも虫の方が、森林に与える影響が大きいことに気がつきました。火災の方がニュースになりますが、虫の食害などにより弱くなった森林は、火災と大きく関係していました 蔵王に観光で行ったときに、森林が虫害で衰退していることを知りました。シベリアでは葉を食べる虫による食害なので森林は数年たつと復活する場合もあります。蔵王についても、当初は同じように復活すると考えていたのですが、現状では、自然に回復しないことがわかりました。蔵王の森林変化は非常にダイナミック。数年にわたって解析すると、毎年の変化がとてもよくわかります。しかも、画像データにすると、ビジュアル変化が分かりやすく、山形はもちろん世界の人たちに「蔵王に何が起きているか」、理解してもらえるようになるのではないかと思いました。 “データの集め方“を変えることで、期待できること 以前から、研究でドローンは活用していましたが、当初は撮影して“見る”だけでした。しかし、2018年にやってきたイタリアからの留学生が、ドローンで撮影した画像の解析ソフトを扱うことができ、活用の幅が広がりました。また、現在はパナマ大学の学生がいるのですが、彼はコンピューターサイエンスのスペシャリスト。ディープラーニングでの解析を担当しています。私の研究室には、いろいろな国の留学生が集まってきますが、一人ひとりがさまざまなアイデア、技術、経験を持ってやってくるので、研究が飛躍的に進んでいます。 日本は68%が森林ですが、実はまだまだ謎も多いです。ドローンを活用し、森林をデジタル化することで、謎が解けると期待しています。例えば、「一つの山の森林バイオマスがどのくらいあるか」、「伐採した場合の木材の価値はどのくらいか」なども、リアルタイムで予測できるようになれば、効率的な管理ができるようになるかもしれません。山形にとって、蔵王はとても大事な場所。今後は研究を進めると同時に、ドローンを使いながら地元の小学生~高校生などの若い世代にも現状を知ってもらえるような活動もできればと考えています。私にはない発想をもっているかもしれませんし、将来は大学に入って一緒に蔵王の研究をしてくれるかもしれませんしね。 森林研究を通して、伝えたいこと 私は気候変動影響の研究も同時に進めています。天候や気温、湿度などの気象データから、何がどのように変化しているのか分析しますが、森林生態系などの「環境」がどのように変わっているのか、気象が生態系にどのような影響を与えているのかは、わかりにくいものでした。ドローンを用いて連続的に記録することで、10年後や20年後にどのような変化が起こるのか、分析できるようになると考えています。広範囲の画像データを残すことができるので、研究も大きく広がります。森林の研究を進めるにあたり、フィールドを歩いて調査することはこれまで同様に大切ですが、広い目で森林を理解するためには、ドローンなどを用いたデジタル化も大切。多層的な視野を養うことで研究が発展していくのだと思います。
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2023/04/27
- お知らせ
- イベント
- データサイエンスcafé
- 実施報告
【実施報告】DSCafé「蔵王山のアオモリトドマツのデジタル化」を4/26に開催しました
2023年4月26日のDSCaféは、「蔵王山のアオモリトドマツのデジタル化」という演題で、森林生態×データサイエンスをテーマに山形大学農学部のロペス・ラリー教授にご講演いただきました。 森林状況をどのように調査する? ロペス先生のご専門は森林気象学で、山形県内だけでなく、東北各地の様々なフィールドでご研究されています。今回は蔵王山におけるアオモリトドマツのご研究についてお話いただきました。これまでは衛星画像を活用した研究もされてきましたが、最近はドローンをフル活用して研究を進めているとのこと。その理由は、撮影タイミングの自由度や機動力が非常に高く、樹木1本から森林全体までを評価できるから。今回のご発表では、ドローンを用いた精密なリモートセンシングによる森林モニタリングについてお話いただきました。 蔵王山の森林の現状把握 現在、地球温暖化とCO2濃度上昇に伴い、世界各地で森林限界の標高が上昇するという現象が起きています。しかし、蔵王では逆。数100mも森林限界が下がる、という現象が起きているそう。しかも、森林限界付近ではアオモリトドマツがほとんどなくなっているとのこと。先生は2019年からドローンを使って、蔵王ロープウェイ周辺エリアの森林を調査。得られた画像を樹木の1本単位で健康状態を把握し、最終的には森林全体の健康状態の経年変化のモニタリングしています。膨大な画像処理には深層学習を利用。樹木2万本の健康状態を評価し、毎年増加し続ける罹患木と枯死木の本数が正確に把握できたとのこと。さらにその要因は、必ずしもキクイムシそのものによるものだけでなく、キクイムシ感染の前に、雪や風による物理的被害の影響を受けた弱い樹木が増加している影響が大きいのだとか。さらに、樹種判別でわかったこととしては、枯死したアオモリトドマツに代わって、マツと広葉樹を含む混合林に変化しており、かつ、構成樹種は、標高によっても違うのだそうです。 これからの森林のスマートモニタリング現在、先生の研究室では、「Zaochan:ざおうちゃん」という森林管理のためのソフトウェアを開発中。開発には、修士課程の学生が関わっていますが、実はその方は農学部の学生ではなく、環境学に興味があるソフトウェア開発などの工学指向の学生とのこと。ロペス先生のお話では、このようにデータサイエンスを得意とする人材が加わらなければ、今回のような研究はできなかっただろうとも。データサイエンスは研究の要。このようなソフトウェア開発が進めば、様々な場所の森林管理が、よりスマートにできるようになることが期待されます。 当日会場には13名、オンラインでは12名の方にご参加いただきました。会場参加の学部1年生からもたくさんの質問が飛び出し、オンラインからの質問も合わせて活発な会となりました。
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