山形大学データサイエンス教育研究推進センターでは、2023年1月31日に、高等学校や大学などの教育関係者を対象としたFD講演会(※)を開催しました。講演後、第一部で「学習指導要領の改訂に伴う高等学校における情報教育の学びの変化」についてお話しいただいた佐藤勝治先生にインタビューを実施。山形県の情報教育に携わる佐藤先生が考える、教科としての「情報」のあり方や今後について、お話しを伺いました。
聞き手・奥野貴士 山形大学データサイエンス教育研究推進センター長 (2023年1月31日実施)
※FDとは…Faculty Developmentの略。教育内容や方法を改善し向上を図る組織的な取り組みのこと。
教育の面白さを知り、 民間企業を経て教員に
大学では情報工学を専攻していました。周囲はシステムエンジニアなどの技術者を目指す人ばかりでしたが、私は友人と教職課程の単位も取り始めました。明確な理由はなく、なんとなく授業を受け始めたのですが、教科としての「情報」を学び、教育実習なども行う中で「教育って面白いなぁ」と思うように。でも、当時は教科「情報」の教員採用が極端に少なかったので、就職活動ではひとまず塾や予備校を受けました。教師になるとしても、教え方や進路の知識があった方がよいのではないかと思ったんです。卒業後は民間企業に就職し、その後、山形県で初めて「情報」の教員になった先生と話す機会があり、改めて教員として「情報」に携わろうと考え、採用試験を受け「情報」の教員になりました。
文系の生徒にも 目を向けてほしい「情報」
学校の教科は、数学や理科などの「理系」と、国語や社会などの「文系」に分かれていますが、個人的にはそのくくりは無くした方がいいと思っています。生徒に「情報はどっちだと思う?」と聞くと、大半が「理系」と答えますが、「情報」を通して学ぶ統計とかは、どちらの分野でも使いますよね。近年、探究型学習が重要視されていますが、課題を解決するプロセスにも「情報」の知識は必要です。教科としての「情報」というと、「高度なプログラムを作らなればならない」と考えてしまうから、理系だと思われがちですが、あくまでプログラミングの手法や考え方を学ぶのであって、高度なプログラムを作る必要があるときには得意な人に任せればいいんです。そう説明すると、文系思考の学生も「情報」に興味をもってくれます。
実際、生徒から「情報で学んだ○○が、別の授業で活かされました!」と報告されることもあります。私たちも気が付かないことが多いので参考になりますね。数学や理科だと、知識を積み上げて達成できるようになる(問題を解けるようになる)ことが学習成果となりますが、「情報」は必ずしも知識を得ることだけが目的ではないというのは、教育上で難しい面でもあります。
はじまったばかりの教科だからこそ、 能動的に学ぶ姿勢を大切に
現在、山形県教育センターでは、「情報」の教員を対象にした講座を企画しています。これは、先生方に模擬授業を考えてもらいながらグループワークを行い、学び合うような研修となる予定です。お互いに情報共有しながら、教育のスキルを高めていければと思います。また、文部科学省でも教員研修用の動画も準備されています。はじまったばかりの教科ですので、能動的に学ばなければいけないことが多いのは、ある意味では大変かもしれません。
もし、「情報」の教員になりたい方がいれば、まずは基本となる「情報Ⅰ」の教科書を読んでいただき、知識をおさえてほしいです。また、欲を言えば生徒が自ら学べるように導ける教育スキルもあればよいですね。すぐに身に付くものではありませんが、教科としての「情報」を生徒に教えていくには、そういうマインドを持つということが大切だと思います。