NEWS##弥生時代
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2024/03/25
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学問分野に捉われずオープンマインドに共同研究を
2023年5月に行われた「データサイエンスカフェ」では、「ベイズ統計を用いた考古学研究の実践 ―日本考古学とアンデス考古学―」をテーマに、学士課程基盤教育院の白石哲也准教授と、人文社会科学部の松本剛教授にお話をいただきました。データサイエンスカフェ終了後、お2人に考古学を志したきっかけや共同研究をする理由、データサイエンスとの関わり方について、お話しを伺いました。 本インタビューをきっかけに、白石先生と松本先生が進めてきた「魚醤」の研究に当センター長の奥野先生も加わることになり、2023年8月に行われた「第2回山形大学異分野交流学会」ではお三方のご発表が学長賞を受賞しています。 聞き手・奥野貴士 山形大学データサイエンス教育研究推進センター長(2023年5月10日実施) 学問領域にこだわらず、幅広い分野と協働 大学生の頃、漠然と考古学に興味はありましたが、海外で研究をしたいと思っていました。そんなとき、国立科学博物館で開催されたシカン文化※1の発掘展が転機になりました。シカンの名付け親で、後に僕の指導教官になる島田泉先生の監修でした。なんとこの展示、たった1つの貴族の墓からでてきたものだけを頼りに社会全体を語っていました。でも、学際協働※2にもとづいて詳細に分析すれば、驚くほどたくさんの情報が得られるんです。たとえば遺体の骨学分析からは、性別や死亡年齢はもちろん、死因や体格、病歴、栄養状態までわかりますし、墓から出土した金属製品を冶金技術の専門家が分析すれば、どのような技術をつかって作られたかのみならず、職人たちがどのような生産体制のもとで仕事に従事していたのかまで推測することができるんです。完全に魅了されてしまった僕は「この先生につきたい!」と思って、アメリカの大学にいる先生に手紙を書きました。最初は断られたんですが諦めきれなくて渡米し、学部4年生に編入。初めてお会いしたとき、先生はまさかアメリカまで来るとは思っていなかったようで驚いてましたね。授業や課題論文で高評価を得ることで、発掘に同行させてもらえるようになり、大学院に進学して研究室にも入ることができました。 ※1 ペルー北部沿岸で9世紀~14世紀に栄えた文化※2 複数の異なる学問領域が協力し合うこと 考古学を本格的に志したきっかけが、学際的研究だったからか、今でも自分の専門外の分野や技術は積極的に導入したいと考えています。例えば、LiDARやドローン空撮、フォトグラメトリーなどを駆使して遺跡の三次元地図を作るとか、早い段階から取り入れてきました。はじめは全然わからなかったりもするんですけど、一から勉強して、ある程度理解できるようになったら専門家と協働します。共同研究するにも、評価はできないといけませんから、自分にも知識は必要です。大変なことではあるけど、幅は広がります。(松本先生) 先史時代の食事と健康を紐とくカギはウンチ? 小学校低学年のときに、テレビ番組の「世界ふしぎ発見」をみて、面白そうだと思い、考古学を目指しました。その後、大学進学時に浪人していた時、佐原真先生(考古学者)の本を読んだのですが、それが面白かったんです。佐原先生は弥生時代の研究者ですが、自分は佐原さんの本を読む前に、「史記」や「孫子」、「論語」を読んでいて、時代もリンクするというところにも興味を持ちました。そこで、日本の私立大学で最も早く考古学専攻を設立した明治大学に進学することにしました。 学部生の頃に、弥生時代の研究を目指していました。弥生時代は、食の変化がとても面白い時代で、今も継続しているテーマになります。その後、大学院は首都大学東京(現在の東京都立大学)へ。都立大は、実験考古学など、日本では非常に珍しい取り組みをしている研究室でした。今も実験や民族調査を行っているのですが、その基礎はこの頃に学んだところになります。 今は、先史時代の食と健康を繋げたいと思い、研究を進めています。食物をつくり、食べ、出す(排泄する)ところまでの一連を、栄養学とかDNAとかの研究者にも入っていただいていて分析しています。最終的には、先史時代に生きた人たちの健康状態を知りたいですね。その点でも、ウンチはすごく大切。日本全国の排泄物の化石を調べていてデータベースにしています。件数としては1000もないくらいで、そこまで多くはありません。ただ、病気とか寄生虫のチェックをして、今すごく関心を持って取り組んでいるテーマになります。(白石先生) 着任後、すぐに意気投合。まずはなんでもやってみる 僕は白石先生より少し前に山形大学に着任していましたが、白石先生が着任されたときに飲みに誘っていただいたんですね。それ以来、堅苦しくなくカジュアルに仲良くしています。どちらも国境を越えて共同研究をしてきた人間だからオープンマインドなんです。白石先生はいつもなにかあればすぐに提案してくれます。僕は発酵文化に強い関心があるんですが、それを知った白石先生が「今度、魚醤の研究をするので一緒にやりませんか?」と誘ってくれて、研究チームに加わりました。山形の飛島には絶滅寸前の魚醤があり、現地調査に赴きました。2024年3月末には研究成果をまとめた本が刊行になります。(松本先生) 今後の科学技術発展から期待できる発掘作業の効率化 発掘作業というのは本当に大変で、膨大な手間と時間、費用がかかります。また、筆や竹串などで繊細に作業することもあれば、ツルハシを使って豪快に掘り進めることもあります。近未来を舞台にしたある映画のなかに、まったく掘らなくてもどこになにが埋まっているかを三次元映像で知らせてくれる超高性能の地中探査機が出てきました。今でも地中レーダーを使うことはありますが、わかるのは「このあたりに何かがある」という程度で、それが何であるかまでは教えてくれません。あんな風になにがどこに埋まっているのかをピンポイントで知らせてくれるような機器が登場しないかなあと妄想することがあります。(松本先生) 「文理融合」という言葉に考えること 学生の頃、研究室にいると、よく「なんで研究室にいるんだ?」と言われました。発掘や現地調査などフィールドに出て、とにかくいろいろなモノをみてこい、ということです。また、考古学を専攻した学生は考古学だけ、データサイエンスを専攻した学生はデータサイエンスのことだけをしていればよいかといえば、決してそうではないと思っています。わからないことを知るためには、たくさん勉強しなければならないし、経験も積まなければなりません。そこに、学問分野というのは関係ないと思います。一方で、自分自身が原点に立ち返られる場所もまた必要で、それが学問分野であり、自分にとっては考古学です。(白石先生) 人類学の基礎を築いた人たちというのは、地理学や物理学、医学の勉強をしていた方だったりします。それまでにない学問分野を新たに作り出した人というのは、みんなある意味でジェネラリストだったのでしょう。もちろん特化した専門はあったわけですが、それ以外にも目を開いているから新しい学問体系を作ることができたのでしょう。そもそも「おれ、文系」とか、「わたし、理系」とか言って、自分の守備範囲を限定してしまうのって、とても残念なことじゃないですか。教員間でも、学部や分野に捉われずに協働して、そういう姿勢を学生に見せていければと思います。(松本先生)
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2023/05/12
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- データサイエンスcafé
- 実施報告
【実施報告】 DSCafé「ベイズ統計を用いた考古学研究の実践ー日本考古学とアンデス考古学ー」を5/10に開催しました
2023年5月10日のDSCaféは、考古学×データサイエンスをテーマに山形大学教員による「ベイズ統計を用いた考古学研究の実践~日本考古学とアンデス考古学~」を実施いたしました。学士課程基盤教育院の白石哲也准教授には「考古学と年代学」、人文社会科学部の松本剛教授には「14C年代のベイズ分析(先スペイン期アンデスの場合)」との演題で、ご講演をいただきました。 考古学と年代学 白石先生のご専門は考古学で、先史時代の食文化や弥生・古墳時代の信仰関係のご研究をされています。今回は、考古学における年代、土器の型式学、14C年代、ベイズ統計を応用した暦年代論についてお話いただきました。土器の文様は時代とともに連続的に変化しており、層位学的確認を経て、相対年代が設定されます。しかし、地域差のない、地球規模での絶対年代(暦年代)を決めるには別の指標が必要で、近年は14C、すなわち放射性炭素年代測定が多用されています。ただし14Cの測定値そのものはバラつきがあり、年代推定には校正が必要となり、ここに、ベイズ統計が使われているとのこと。今回のご発表は考古学の歴史や基礎、14C年代推定方法について、分析機器の写真や発掘現場の作業風景、数多くの土器の写真やイラストも交えながら、わかりやすくご講演いただきました。 14C年代のベイズ分析(先スペイン期アンデスの場合) 松本先生は、アンデス考古学を中心にご研究されていますが、今回は南米ペルー北海岸ので紀元後950年ごろから150年ほど(シカン遺跡を中心に)栄えたランバイェケ文化に関するご講演をいただきました。「ランバイェケ文化は11世紀半ばに始まった大規模気候変動がきっかけとなり、社会不安が広がり、それまで重圧を受けてきた一般民衆が放棄して滅ぼされた」というのがこれまでの定説でした。しかし、先生方の調査により、実際には通説とは異なると考えられたため、堆積学や放射性炭素年代測定、粒度分析、蛍光X線分析などの様々な分析手法を用いて調査し、検証したとのこと。14Cによる放射性炭素年代測定データをベイズ統計処理すると、30年単位の高精度年代推定ができ、その結果に基づくと、やはり従来説は再考が必要であろうとの内容でした。 当日の参加者は、対面会場7名、オンライン14名と、文系理系問わず多くの方にご参加いただき、スタッフ3名、講師2名合わせて総勢26名で活発な議論を展開しました。なお会場には学長が飛び入り参加、オンラインにも副学長1名のご参加がありました。
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