地域の「記憶」をアーカイブし、未来に繋ぐ。「現在」を失わせないために、学生とともに立ち上がる

再開発などを理由に、街並みは刻一刻と変化しています。このままでは景観だけでなく、暮らしていた人々の思いなど、未来に残すべきかけがえのない地域の「記憶」は失われてしまいます。そこで、山形大学附属博物館が中心となり、街並みの撮影やまちの人々へのインタビューをデジタル化する取り組みを進め、その成果をホームページや年に2回開催のイベント「ななはく!」で公開しています。2023年6月に行われた「データサイエンスカフェ」では、「地域の『記憶』をデジタルで集める・残す・活用する」と題して、人文社会科学部の小幡圭祐准教授と、学生サークル「まちの記憶を残し隊」の髙橋怜華隊長にご講演いただきました。イベント終了後、お2人から活動内容やデータサイエンスとの関わり方について、お話しを伺いました。

聞き手・奥野貴士(データサイエンス教育研究推進センター長)

我々の「身の回りにあるもの」も後世に残すべき史料

当初、山形大学附属博物館の佐藤琴先生が、七日町のみなさんと「何か、一緒に取り組んでいきたいですね」という話をしていたところに、私にも声がかかりました。私の専門は日本近代史ですが、現在、山形は非常に変化が激しいと感じていて、記録することへの協力はできるのではないかと考えました。当初は、私が定期的に七日町の街並みを撮影し記録したりしていましたが、今は授業の課題として取り組んだり、学生サークル「まちの記憶を残し隊」のメンバーと活動したりなど、学生を巻き込みながら展開しています。

「歴史」というと「江戸時代」など昔のことを想像する人が多く、古い時代の史料というのは大事にされます。一方で、現在は当たり前に存在している、我々の身の回りの物事や出来事は、大事にされにくい。それらを残していく大切さに気づかないと、100年後や200年後に何も残っていない状態になってしまうかもしれません。私たちの活動が、そういった気づきのきっかけにもなればと思っています。(小幡先生)

山形大学 准教授 小幡圭祐先生
(人文社会科学部主担当/日本近代史)

人のココロを動かして、次世代に繋げるために

山形大学 人文社会科学部学生 高橋怜華さん
(「まちの記憶を残し隊」隊長)

「まちの記憶を残し隊」の活動に興味を持ってくださる人は、歴史好きが多く、イベントに来てくださる方は比較的年齢層が高めです。でも、歴史に興味がない人たちや若い世代にも、この活動の重要性を伝えていくことが大切なのではないかと思っています。私たちは、街並みの記録だけではなく、インタビューを動画で記録するなど、人々の記憶のアーカイブ化にも取り組んでいます。また、「ななはく!」などのイベントでは、まちの思い出を付箋に書き込んでもらうなどの活動もしています。歴史に興味はなくても、自分に関わるものなら、興味はあるはず。例えば学生時代に流行していたものから、記憶を辿ってもらいアーカイブのきっかけにするなど、人々の想いを次世代に残すことに共感してもらえるような方法を考えていきたいです。

私個人としては、教育にも興味があります。今は、アーカイブをする活動が中心ですが、今後、そのアーカイブを使って、小学生や中学生、高校生などにどのような授業をできるのかを考えたりすることもあります。(高橋さん)

得意分野のスキルを活かし、協力しながら取り組む

私は理系分野については苦手で、全くわかりません。でも、まちの記録や記憶をデジタル化していくという今の活動は、とても楽しんで取り組めています。また、自分は、私たちの活動を広く知っていただくための広報や周知は、比較的、得意分野。そこから自分のスキルアップに繋がることもあります。そのような経験から、メンバーそれぞれが自分のスキルを活かして、協力しあって取り組んでいくことが大切ではないかと、活動を通して感じています。(高橋さん)

私は写真撮影のテクニックがあるわけでもないですし、情報システム技術についてもよくわかっていない部分も多いです。でも、そんな私でも、データサイエンスと言えるものには、今のような形で携われています。「データサイエンス」と聞いても敷居高く感じずに、まずは取り組んでみたらいいのではないかと思います。(小幡先生)

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