2023年7月5日のDSカフェは、データサイエンス多目的ホールに山形大学の教員4名と広重美術館1名の合計5名の講師をお招きし、”文化財保全×データサイエンス”をテーマに標記のタイトルでご講演をいただきました。
今回の講師は、山形文化遺産防災ネットワーク事務局長の佐藤真海先生(人文社会学部・講師)、同・代表の佐藤琴先生(学士課程基盤教育院・准教授)同・世話人の小幡圭祐先生(人文社会学部・准教授)、同世話人土屋明日香氏(広重美術館・学芸員)、山形大学災害環境科学研究センター兼務の熊谷誠先生(地域教育文化学部・講師)の5名の方にお話しいただきました。
山形文化遺産防災ネットワークは、山形に根づいている文化遺産を災害から守りたい」の志のもと結成されたボランティア団体です。歴史学や美術史の研究者や地域の歴史に興味のある一般市民や学生さんが中心となって、地域に残る古文書や絵画、民具あるいは写真などの様々な歴史資料を災害からレスキューして保存する活動を実施しておられるそうです。
講演冒頭には、佐藤真海先生の方からから、本講演の趣旨として次のようなご説明がありました。”日本列島は豊かな自然に恵まれている一方で、様々な自然災害が多発しています。特に近年は気候変動を背景として、日本各地で大規模な災害が頻発しており、山形県もその例外ではありません。そのような状況において、山形ネットが効果的かつ迅速にレスキュー活動や文化財の保全活動を行う体制を構築するため、データサイエンスや地理学、地域防災などの様々な研究領域と共同することで、リスクマネジメントの在り方を模索したり、緊急時にどのような対応を行うかを議論するのが肝要であると考えています。また、災害からの復興の過程において、地域に暮らす人々にとって、文化財や歴史資料が「人々の心のよりどころ」あるいは「かけがえのないもの」として大きな役割を果たしているということが、経験値としてわかってきました。」とのお話がありました。
そして、土屋明日香氏からは資料修復の実態、熊谷誠先生からは水害からの資料防災の観点からデータベースの活かし方のお話、小幡圭祐先生の方からは「ななはく」について、終盤は佐藤琴先生から、実際の取り組みの中で自治体との関わりや課題などについてお話がありました。
司会者の脇克志先生(理学部教授)からは、ご自身の研究対象とされている「和算」の資料解読に触れ、データサイエンスと歴史資料の解読・記録は相性がよいとのコメントもありました。会場の学生さんからも積極的な質問があり、活発な議論が行われました。閉会後も会場では、脇先生と講師5名が熱い議論が交わされ、データサイエンス技術と資料保存との新しいつながりの兆しも見られました。
今回は見逃し配信も含め、総勢62名の方にお申込みをいただき、会場には8名、オンラインには23名の方にお越しいただきました。ご興味ある方はぜひ会場まで足をお運びいただき、”数理・データサイエンス・AI”と自分との新しい”つながり”を探してみてください。
※山形文化遺産防災ネットワーク(通称:山形ネット)についてはHPをご覧ください