【実施報告】『遺す(のこす)』×YUDS ~まちの記憶や文化財をデータと人でつなぐ~(DSカフェ・11/19開催)

2024年11月19日に開催された今回のDSカフェでは、「遺す(のこす)」をテーマに、文化財や地域の記憶をデータで記録し、人々につなぐ取り組みについて、山形大学の小幡圭祐准教授と佐藤琴教授にお話しいただきました。

先端技術の活用や災害対応を通じて文化財を守り、未来に伝える重要性について考える機会となりました。


【第1部】”オットセイ”のブロニー君のお墓を3Dデータで記録・保存・活用する!

講師:小幡圭祐 氏(山形大学人文社会科学部 准教授/山形大学附属博物館 学芸研究員)

第1部では、山形市内にある「オットセイのブロニー君」のお墓を題材にした3Dデータ化の取り組みについて、小幡准教授よりご紹介いただきました。
ブロニー君は、かつてサーカスの巡業中に訪れた山形で火事により亡くなったと伝えられていました。しかし,墓石に刻まれた日付は、火災の16年後。文献調査の結果、実は火災とは全く異なる理由で亡くなっていたということが判明するなど、小幡先生によって、歴史の再発見が行われました。

これを機に、先生は”王立ブロニ―学会”を創設するとともに、様々な文化財や”まちの記憶”をデジタル化して遺すための手法として、フォトグラメトリをはじめとする様々な技術を活用し3Dデータ化も実施されました。

講演当日は立体データを参加者のスマホでAR閲覧したり、3Dデータのスキャン作業の実演が行われたりと、参加者はその精密さと応用可能性に感嘆しました。この技術は単にデータを保存するだけでなく、文化財の価値を広く伝え、保存や継承活動を促進するツールとして活用されています。


【第2部】7月25日大雨による文化財の被害とその対応ー山形文化遺産防災ネットワークの取り組みー

講師:佐藤琴 氏(山形大学学士課程基盤教育院 教授)

第2部では、2024年7月25日の大雨被害に対する文化財保護活動について、佐藤教授から報告がありました。佐藤教授が参加する「山形文化遺産防災ネットワーク」の活動内容や、その重要性が具体的な事例を交えながら解説されました。

新庄ふるさと歴史センターが浸水した際の被害状況や、文化財の救出活動では、被災した資料を水から守るだけでなく、その後の清掃作業やカビ被害への対応が必要だったことが共有されました。この過程では多くの関係者が関わり、長期間にわたる作業が求められたとのことです。
また、災害対応では、事前に文化財の所在や状態を把握することの重要性が強調されました。東日本大震災の際に津波被害への対応が大きな課題となった経験から、今回のような事例に備えるネットワークの構築と活動の意義が再認識されました。

当日会場は8名、オンラインには14名の方が参加しました。終了後のアンケートでは、「3Dデータの作成がこんなに簡単にできることを知りました。(中略)遺すことはつながること、続けることという言葉がとても印象的でした。」といった声や、「データサイエンスカフェに参加するのは今回が初めてでしたが、想像していたよりもずっと気楽に聴講できました。身近な土地である山形から繋げて、日々進化を続けている技術について知ることができて楽しかったです。」といった回答もいただきました。

会場では、楽しく、リラックスして、お話を聴いて、気軽に質問できるよう、暖かいフリードリンクをご用意して、皆様のお越しをお待ちしております。ぜひ会場まで、ふらふらっとお越しください!

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